人生で数限りなくある出会いのなかで、いつまでも続くご縁を実感しているのが、ミュシャの作品。
1976年に画廊を開設する前から、非常に関心のあったアイテムがポスターとポストカード。
60年代半ばをパリで過ごしていた時は、余裕の無い学生だったため、ポスターやポストカードの
類に目を奪われていたのか?いや日本にはないセンスのよい内容に惹かれていたほうが強い。
日本に戻ってからも、なにか日本にない良いものを紹介する方法を模索しながら、具体策もないままに、ヨーロッパのポストカードやポスターの制作会社をいろいろ調べ、資料だけ取り寄せていた
時、ある方からパルコを紹介され、丁度パルコでポスターを扱うショップがオープンするということでパルコのポスターハウスにヨーロッパのポスターを納品することになった。60年代はヨーロッパでも、アールヌーボーの波が復活した頃で、ミュシャ、シェレー、スタンラン、ロートレックのポスターの複製ポスターに感心していた時でもあった。
70年代の日本では、ポスターの評価は殆どなく、しかもポスターを売るという発想が一般になかったため、ポスターを千円で売るといったら驚かれた。これらポスターハウスに納品したポスターが、予想以上に売れるようになったのは、新しい波に敏感な若者の支援があったことと思われる。
ギャラリーをオープンしてから、久しぶりにパリに戻り、リューボナパルトを歩いていて、ふと
立ち寄ったギャラリー(このギャラリーはフォロンのシルクスクリーンのポスターを発売したことでもしられていたが、現在はクローズされている)で見せていただいたのが、ミュシャのオリジナルポスター「ゾディアック12宮」だった。
それまで、複製を扱っていたのにオリジナルの作品をみるのは初めてだった。オリジナル作品が
買えるなど考えたこともなかった。
オフセットの複製と違い、品格の漂うポスターは、大理石の石に刷るリトグラフの味わいある感触が
実に美しかった。実際のオリジナル作品を一度見てしまうと、オフセットの複製から、オリジナルの
ポスターを紹介する方向にどんどん移っていくことになった。
もちろん、この記念すべきミュシャのポスターは日本に持ち帰りました。